「辞めたい」と言われてから条件を積んでも遅い——まず事実を聞く
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部下から「辞めたい」と相談された上司が、その場で給与アップを提案して引き止めようとした——よくある光景ですが、順番を間違えています。
条件で引き止めた人は、条件で辞める
給与や役職といった条件を提示して残ってもらうこと自体は、選択肢としてあり得ます。しかし条件で引き止めた人は、また条件で辞めていきます。辞めたいと言い出した根本の理由が解決されないまま、金額だけが上乗せされた状態が残るからです。条件は一時的に不満を覆い隠しますが、覆い隠された不満は消えていません。
相談された時点で、原因はすでに半年前から始まっている
「辞めたい」という一言は、その場で急に生まれたものではありません。たいてい半年前後さかのぼった時点から、何かが起き始めています。役割が固定されたまま変わらなかった、評価に納得がいかなかった、相談できる相手がいなかった——理由は人によって違いますが、共通するのは言葉になるまでに時間がかかっているという点です。
だから相談された瞬間に条件の話から入ると、この半年間に何が起きていたかを聞き逃します。その人を引き止められるかどうかより先に、何が起きていたのかを知ることのほうが会社にとって価値があります。
まずやることは、事実を聞くこと
相談を受けたら、最初にすべきは引き止めでも慰留でもなく、事実を聞くことです。
- いつ頃から、そう思うようになったか
- きっかけになった出来事は、具体的に何だったか
- いま何があれば残れる、ではなく、何が起きていたら辞めずに済んだか
事実がわかれば、たとえその人を引き止められなくても、次に同じ理由で辞める人を止めることができます。1人の相談を個別対応で終わらせず、同じ構造が他のメンバーにも起きていないかを確認する視点が要ります。1件の相談の裏には、まだ言葉にしていない人が他にも何人かいる、という前提で聞いた方が実態に近いです。
事前の兆候とは、別の話
辞めたいと言われる前に出ているサインについてはこちらの回で扱っています。今回の話は、そのサインを見逃した後、すでに「辞めたい」と言われてしまった瞬間にどう応じるかについてです。事前に気づくのが理想ですが、気づけなかった場合でも、条件より先に事実を聞くという順番だけは変わりません。
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