限界利益で「赤字でも受けるか」を決める——緊急避難と方針の境目
この記事はSES経営の話です。自社の現在地は、3分の組織診断で測れます。無料・匿名です。
単価の低い案件しか決まらない。それでも人を埋めるべきか、待機を選ぶべきか——この判断で迷ったとき、見るべき数字は営業利益ではありません。
限界利益は「売上 − 変動費」
限界利益とは、売上から変動費を差し引いた金額のことです。固定費をどれだけ回収できているかを示す数字で、営業利益や当期純利益とは別の物差しです。
SESでは技術者の人件費が、実質的に固定費として動きます。稼働していても待機していても、給与はほぼ同じだけ出ていくからです。だから待機が出た瞬間、その人の分の固定費は丸ごと回収不能になります。
「赤字でも受ける」が成り立つ場面
ここで限界利益がプラスかどうかを見ます。単価がその案件の変動費を上回っているなら、限界利益はプラス。全社の営業利益や当期純利益はまだ赤字のままかもしれませんが、待機させておくよりは、固定費の一部を回収できている分だけましという判断が成り立ちます。
これは緊急避難としては正しい判断です。待機の実コストは単価分だけでは済まず、営業の機会損失や管理コストも重なっていきます(詳しくは待機コストの回)。目の前の待機を止める一手として、限界利益がプラスの受注を選ぶのは合理的です。
それを方針にした瞬間、話は変わる
問題は、この判断を恒常的な方針に変えてしまうことです。「限界利益さえプラスなら受ける」を営業の標準ルールにすると、単価の低い案件ばかりが積み上がっていきます。損益分岐点(固定費÷限界利益率)は、限界利益率の低い受注を増やすほど下がるのではなく、むしろ遠のきます。一時しのぎとして正しい判断を、方針として使い続けると、会社全体の収益構造そのものが薄くなっていく——ここが緊急避難と方針の境目です。
判断のルールを、あらかじめ決めておく
その場の感覚で「今回だけは」を繰り返すと、いつのまにか常態化します。効くのは、判断の基準を先に文書化しておくことです。
- 限界利益がプラスなら、待機を避けるために一時的に受けてよい
- ただし同じ単価帯の案件が◯か月続いたら、営業会議で構造の問題として扱う
- 単価の低い受注が全体の何割を超えたら、受注方針を見直す、という上限を決めておく
限界利益は、待機を止めるための短期の判断材料であって、経営方針の代わりにはなりません。全社の一人あたり粗利がどう推移しているかはこちらの回で確認できます。自社の待機と受注の状態は組織診断(14問・3分)でも見られます。
この記事は役に立ちましたか?