客先の「ついでにこれも」を、断らずに引き取る言い方
この記事はSES経営の話です。自社の現在地は、3分の組織診断で測れます。無料・匿名です。
「ついでに、この資料も直しておいてもらえますか」——客先の担当者からの一言に、現場のエンジニアもあなたも、断りづらくてそのまま引き受けたことがあるはずです。1回なら、何の問題もありません。
「今回だけ」は、いつか「いつもの」になる
契約に無い作業を、断らずに受け続けると、それはいつの間にか「合意された範囲」として相手の中に定着します。次に同じ依頼が来たとき、相手にとってはもう「お願い」ではなく「いつもの依頼」です。そして担当者が変わっても、その認識だけは引き継がれます。
この状態は、契約の建付けそのものも危うくします。 客先が現場に直接、日々の作業を指示している実態は、準委任のはずの契約が偽装請負と判定される材料の一つになりえます(2026年8月時点の制度に基づきます)。範囲が育つのは、関係の良し悪しの話であると同時に、契約そのものの話でもあります。
断るのではなく、「持ち帰る」
現場で角を立てずに線を引くコツは、その場で断ることではなく、その場で即答しないことです。 即答での快諾が、範囲を育てる最大の原因になっています。
「対応自体は可能だと思いますので、いったん持ち帰らせてください。契約の範囲に関わる話なので、こちらから正式にご案内します。」
このひと言で、断ってはいません。しかし「即・無償・無制限に受ける」という既成事実は作らずに済みます。現場のエンジニアには、これを合言葉として渡しておくべきです。 現場の裁量に任せていると、断れる人と断れない人の差がそのまま会社のリスク差になります。
持ち帰った後にやること
持ち帰った依頼は、必ず営業の側で記録し、次のどちらかで処理します。
- 単発で軽微——今回だけ無償で対応し、記録に残す(次回同じ依頼が来たときの材料にする)
- 継続・発生頻度が高い——契約の範囲に正式に組み込む交渉を、次の更新のタイミングで行う
積み上がった記録があれば、更新時にこう切り出せます。
「この半年、契約に無い範囲の対応が月◯件発生しています。次回の更新で、正式に業務範囲へ組み込ませてください。」
これは値上げの交渉ではなく、実態を契約に追いつかせる交渉です。 客先にとっても、正式な範囲になった方が、いつでも頼める安心感が増します。断られたと感じさせず、むしろ関係を整える提案として受け取られます。
会社としてやるなら
範囲の広がりを現場任せにしている会社は、断れる現場と断れない現場の差が、そのまま利益率の差になって出ます。
- 範囲外の依頼が来たときの合言葉を全現場で統一する(持ち帰る、を標準動作にする)
- 範囲外対応の記録を営業が月次で集約する
- 更新のたびに、範囲外対応の実績を契約見直しの議題に乗せる
契約に無い作業への対応方針そのものはこちらでも整理しています。断ることが目的ではなく、実態と契約のズレを放置しないことが目的です。自社の現場がどこまで範囲外対応を抱えているかは、組織診断で棚卸しできます。
実際の契約判断は、専門家の助言の代わりにはなりません。
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