その肩書、中身は付いてきましたか——あなたが本当に受け取ったもの
「来月から主任ね」と言われた日、あなたは何を受け取りましたか。
名刺の肩書は変わりました。給与も少し変わったかもしれません。では——具体的に、何を任され、何を自分で決めてよくなったのでしょうか。
この質問に即答できなかったなら、それはあなたの理解力の問題ではありません。渡す側が、渡していないだけかもしれません。
渡されるものには、4つの層がある
昇進のときに人が受け取るものは、実は4種類あります。そして重要なのは——渡す側にとっての「安さ」の順に並んでいるということです。
① 肩書——名前。渡す側のコストは、ほぼゼロです。辞令を1枚書けば済みます。
② 役割——何をする人なのか、どこまでが自分の持ち場なのか。コストは小。説明する手間がかかるだけです。
③ 権限——何を自分で決めてよいのか。ここでコストが跳ね上がります。あなたに権限を渡すとは、渡す側が自分の権限を減らすことだからです。痛みを伴うものは、渡されにくい。
④ 意味(ミッション)——何のために、この役があるのか。これがいちばん高い。渡す側が自分の言葉で語れなければ、そもそも渡しようがないからです。
安いものから順に渡される。だから世の中で圧倒的に多いのは、①だけが渡され、②が曖昧なまま、③がなく、④は誰も口にしないという状態です。
そしてこれが、「責任だけが増えた気がする」の正体です。気のせいではありません。実際に、責任以外は渡されていないのです。
そして、⑤がある
もうひとつ、可能性があります。何も渡されていないのに、あなたが自分で拾ってしまっているという場合です。
チームの雰囲気。若手のフォロー。誰も手を挙げない雑務。言われていないのに、気づいた人がやる——責任感の強い人ほど、渡されてもいない荷物を勝手に背負います。
拾うこと自体は悪くありません。それであなたは信頼を得てきたはずです。でも、拾った荷物は、誰の目にも見えません。評価もされず、引き継がれもせず、あなたが倒れた日に全部落ちます。
本当に受け取っているか、確かめる5つの問い
順番に、正直に答えてみてください。答えが出ない項目が、渡されていないものです。
① 名刺以外で、何が変わりましたか。会議で座る位置、見られる数字、参加する場——具体的に何かひとつでも挙がりますか。
② あなたの役割を、1行で言えますか。そしてもっと大事なこと——あなたの上司も、同じ1行を言うと思いますか。ここがズレていると、あなたは永遠に評価されません。
③ 「自分で決めていい」と言い切れることを、3つ挙げられますか。「任せた」と言われたのに、結局あなたの決めたことが上でひっくり返るなら、それは任されていません。任せるとは、決定の権利を渡すことです。
④ 「何のために」に、自分の言葉で答えられますか。会社の言葉の受け売りではなく。答えられないのは、あなたの意識が低いからではなく、誰からも渡されていないからです。
⑤ 増えた仕事の時間は、どこから出ていますか。「今の稼働はそのまま、管理は追加で」なら、その時間はあなたの夜と休日から出ています。それは渡されたのではなく、削られたということです。
分かったあとに、できること
確かめて「ほとんど渡されていなかった」と分かると、けっこう落ち込みます。でも、これは被害の確認ではありません。交渉の起点です。
取りに行く。権限は待っていても降りてきません。「この範囲は自分で決めさせてください。結果の責任は持ちます」——具体的な範囲を添えて、自分から取りに行く。取りに行き方の技術は上司を敵にしない技術と根回しは、ずるくないに書きました。
役割を、書いて確認する。上司と1行が揃っていないなら、あなたが書いて見せるのが早い。「私の役割はこう理解しています。合っていますか」——これを嫌がる上司はまずいません。
意味だけは、自分で作れる。4つのうち、これだけが例外です。会社が語ってくれなくても、「自分は何のためにこの役をやるのか」は自分で決められます。実際、リーダーの三行はそのための道具です。渡されなかったものを、自分で用意する——それは負け惜しみではなく、いちばん強い持ち方です。
それでも肩書だけなら、降りるのも選択肢です。名前しか渡されない役を、責任感だけで担ぎ続ける必要はありません(役を降りるという選択肢)。
最後に、いちばん大事な問い
もうひとつだけ。あなたが部下に渡しているものは、何ですか。
「リーダーやってみない?」とあなたが言う日は、思っているより早く来ます。そのとき、あなたは4つのうちいくつを渡せるでしょうか。自分がもらえなかったものを、渡せる人になる——鏡の話は、ここにも効いてきます。
渡す側(会社・経営)から見た同じ話は、経営者向けにあなたが渡したのは、肩書だけではありませんかとして書きました。会社に渡してほしいものがある人は、これを見せるのも一つの手です。自分の現在地を測るならリーダーの現在地(8問)へ。
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