リーダーの次に、もう一段ある——チームを預かる人、組織を預かる人
この柱ではずっと、「エンジニアのまま、リーダーになる」断層の話をしてきました。プレイヤーとリーダーは別の競技だ、と。
実は、階段はもう一段あります。リーダーの次に、管理職。そしてここでも、最初の断層と同じくらい大きく、競技が変わります。
何が変わるのか
| チームを預かる人(リーダー) | 組織を預かる人(管理職) | |
|---|---|---|
| 預かるもの | チームと目の前の案件 | 部門と、その先の組織 |
| 見る時間 | 今週・今月 | 来期・数年 |
| 主な仕事 | 課題を率先して推進する | 構造と戦略を作る |
| 成果の出し方 | メンバーと一緒に出す | リーダーに出させる |
| 育てる相手 | メンバー | 次のリーダー |
| 判断の基準 | チームの最適 | 全体の最適 |
いちばん効いてくるのは、最後の行です。チーム最適の名手ほど、全体最適の判断ができなくなる。自分のチームからエースを他部署に出す。自分の案件より隣の火事を優先する——チームを大切にしてきた人には、裏切りのように感じられる判断が、上の競技では正解になることがあります。
優秀なリーダーが管理職で潰れるのは、能力が足りないからではありません。同じ筋肉の延長だと思って昇るからです。最初の断層とまったく同じ構造が、もう一度起きているだけです。
自己点検——いま、どちらの筋肉を使っているか
チームを預かる筋肉:
- チームのタスクと進捗を把握して、詰まりに先に気づけているか
- メンバーの調子の変化に気づいて、手を打っているか
- 必要な情報を自分から発信して、関係者と滑らかに繋がれているか
- 想定外の課題に、その場で柔軟に対応できているか
組織を預かる筋肉:
- 来期・再来期の絵を描いて、そこから人と時間の配分を決めているか
- 方向を示して、決めているか——嫌われうる決断を、引き受けているか
- 次のリーダーを育てているか(自分の代わりを、作っているか)
- 危機のとき、目の前の案件より部門の安定を優先できるか
前半の4つができていれば、リーダーとしては十分に戦えています。そして後半4つは、「できていない」が普通です。まだその競技に出ていないのだから、できなくていい。
ただ、昇る前に素振りできるものはあります。隣のチームを手伝う(全体最適の練習)。部門の数字を見る癖をつける(単価の決まり方はその入口です)。後輩に自分の役割を渡してみる(三行の「渡す」)。素振りをしていた人は、昇った日の景色が違います。
「マインド」も、行動に翻訳できる
管理職に求められるものとして、責任感・使命感・全体視点——といった「姿勢」の言葉がよく並びます。性格の話に聞こえますが、全部、行動に翻訳できます。
- 責任感=自分の役割を1行で言えて、その範囲の結果を引き受けること
- 使命感=組織の目標と自分の業務のつながりを、自分の言葉で説明できること
- 全体視点=判断に迷ったとき「部門全体にとってはどちらが良いか」を一度問うこと
翻訳できるなら、学べます。マネジメントは技術——この柱の最初からの主張は、二段目の階段でも変わりません。
打診された日のために
いつか「管理職をやってみないか」と言われる日が来たら、2つだけ。
① 何を渡されるのか確かめる。肩書だけか、役割と権限と時間と意味まで付いてくるのか(その肩書、中身は付いてきましたか)。二段目の階段は、一段目より渡し忘れが起きやすい場所です。
② いまの段の実績を、言葉にしておく。リーダー経験は、次の階段の入場券です。チームで積んだことを語れる形にしておく——実績の変換器は、そのための道具です。
階段の場所を知っている人は、急かされずに登れます。まずは、いまの段を丁寧に。
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