「失敗しなかった人」が、ある地点から伸びなくなる理由
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事故を起こさない。納期を落とさない。客先からクレームを出さない。メンバーを辞めさせない。
現場を預かる人の評価は、起きなかったことで決まります。だから優秀なリーダーほど、失敗しない技術を磨きます。危ない兆候を早めに拾い、無理な約束をせず、確実な手を選ぶ。それは正しく、そして実際に強い。
ただ、その技術には上限があります。
45%と78%
CEOアセスメント17,000件超を分析した「CEOゲノム・プロジェクト」(Botelho ら、Harvard Business Review 2017)に、こんな数字があります。
CEO候補者を調べたところ、45%が、キャリアの中で少なくとも1回の大きな失敗を経験していました。 事業を潰した、大きな損失につながる判断ミスをした、といった類のものです。
そして、そのうち78%が、最終的にCEOの座に就いています。
大きな失敗は、選ばれる妨げになっていませんでした。
同じ研究では、着実にやり切る力(信頼性)が高い人はCEOに選ばれる確率が2倍、成功する確率は15倍という結果も出ています。つまり評価されているのは傷がないことではなく、やり切ることと、傷を回収できることでした。
なぜそうなるのか
考えてみれば、当たり前の話です。
現場のリーダーが扱う問題には、たいてい正解があります。どの手順が速いか、誰を担当にすべきか。調べれば、経験があれば、答えは出ます。答えがあるものを外したら、それは落ち度です。だから減点方式が成り立ちます。
上の段が扱うのは、現場で答えが出なかったものだけです。定義上、正解がありません。正解のない問いに答え続ければ、必ず一定の割合で外します。
外さない人がいるとすれば、それは決めていない人です。
減点評価の世界で最適化してきた人が、次の段で静かになるのは、能力が足りないからではありません。外さないことが正解だった世界から、外しても回収できることが正解の世界へ、ルールが書き換わっているだけです。同じことがプレイヤーからリーダーになった日にも、リーダーから管理職になる時にも起きています。三度目、というだけです。
SESでは、失敗が特に隠れやすい
ここは、この業界に固有の事情です。
自社の中で完結する仕事なら、失敗は社内で起きて社内で処理されます。上司が見ていて、その場で手当てが入る。
常駐は違います。失敗は客先で起きて、自社には「客先からの評価」という形で返ってきます。 迷惑をかけた相手が、自分の会社の外にいる。
だから、隠す圧力が構造的に強くなります。
- 自分のミスが、自社の信用と契約の話として跳ね返ってくる
- 現場に上司がいないので、言わなければ本当に誰にも見えない
- 「あの会社の人は」という主語で語られるので、個人の失敗が会社の失敗になる
隠したくなるのは、あなたが弱いからではありません。そういう構造の中にいるからです。
ただ、その構造にそのまま従うと、失敗は「なかったこと」になります。なかったことにされた失敗は、回収できません。払ったのに、何も買っていない状態です。
授業料に変える
失敗を経験として使うのに、特別な精神力は要りません。書き出して、そこで何を買ったかを言葉にする——それだけです。
やり方はひとつだけ。
その失敗で、いくら払ったか。そこで買った判断基準は何か。
金額は、損失額でも、遅延した日数でも、失った信頼の中身でもかまいません。大事なのは対で書くことです。
- 「見積もりを甘く出して、2か月炎上した」だけだと、ただの傷です
- 「見積もりを甘く出して2か月炎上した。それ以来、断言する前に必ず一晩置くようにした」なら、買ったものがあります
払っただけで何も買っていない失敗が、そのまま次の弱点になります。過去の失敗を並べてみて、判断基準に翻訳できていないものがあれば、そこはまだ回収していない場所です。
自分から先に開示する
もうひとつ、上を預かるようになった人向けの話を。
あなたが自分の失敗を語らないチームでは、悪い報告は必ず遅れて上がってきます。 メンバーはあなたを見て「ここでは失敗は隠すものだ」と学ぶからです。常駐で目が届かないぶん、この遅れはそのまま致命傷になります。
順番は逆にできません。メンバーに「早く言ってくれ」と言う前に、自分の失敗を先に出す。それだけで、上がってくる速度が変わります。
失敗を実績の言葉に変える手順は実績の変換器に、日々の記録から始めたい人は三行へ。「管理職がつらいのは役だから」という話はこちらで書いています。
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