1人あたり粗利で会社を見る——SESの損益分解
📗 SES経営のOS|収益性 第1講「売上は毎年伸びています。でも、利益が残らないんです」——SES経営の相談で最も多いパターンです。
原因はたいてい経営の怠慢ではなく、見ている数字の単位が大きすぎることにあります。会社全体の売上と利益だけを見ていると、その中で何が起きているかが見えません。SESの損益は、1人単位まで分解できます。そして分解すると、打ち手まで一直線につながります。
SESの利益の構造は、実はシンプル
会社全体の利益は、突き詰めればこうです。
利益 =(単価 − 人件費フルコスト)× 稼働人数 − 待機コスト − 本社コスト
このうち経営者が毎月見るべき最小の単位が、1人あたり粗利(単価 − その人のフルコスト)です。
フルコストで見る——給与の1.35倍
ここで多くの会社が間違えます。「単価60万・給与32万だから、28万残る」——残りません。給与には社会保険料の会社負担と賞与引当が乗ります。概算で給与×1.35がフルコストです。
- 単価60万 − フルコスト43.2万(32万×1.35)= 1人あたり粗利16.8万円/月
この「1.35」を知らずに給与や還元率を設計すると、稼働しているのに儲からない構造が静かに出来上がります。詳しくは待機コスト計算機でも同じ係数を使っています。
まず「赤字稼働」を探す
全メンバーの単価とフルコストを並べると、たいてい発見があります。
単価がフルコストを下回っている稼働(赤字稼働)が、数名混ざっている。
昔の単価のまま据え置かれたベテラン、育成枠のつもりが単価交渉されていない若手、付き合いで安く出している案件。1人月5万円の赤字でも、3人いれば年間180万円——利益が「残らない」のではなく、先に消えているのです。
健全ラインの目安
会社や商流によって幅はありますが、目安としてはこうです。
| 指標 | 目安 |
|---|---|
| 1人あたり粗利率 | 25〜30%(単価60万なら粗利15〜18万) |
| 本社コスト | 売上の10〜15% |
| 営業利益率 | 10%前後が出ていれば健全 |
粗利率が20%を切っているなら、原因は単価か給与設計かのどちらかです。営業利益率が数%しかないなら、赤字稼働・待機・本社コストのどれかが食べています。分解すれば、どれかは必ず特定できます。
月次で見る数字は3つでいい
経営会議で30個の数字を眺める必要はありません。SESなら3つで足ります。
- 1人あたり粗利(平均と分布)——赤字稼働はいないか
- 待機人月——今月、何人月が空いたか(年間シミュレーションで年額換算すると優先度がわかります)
- 平均単価の前年比——据え置きは実質値下げ。上がっていなければ単価交渉が止まっている
ひとつ補足すると、月次で利益がぶれて見える会社は、賞与月に費用が集中しているだけのことが多い。賞与は月割で引当てて平準化すると、経営の実力が毎月同じ物差しで見えるようになります。
利益は最も遅く動く計器です。赤くなってから慌てるのではなく、1人あたり粗利という早い数字で先に気づく——それが収益性のマネジメントです。自社の計器の現在値は組織診断(14問・3分)でどうぞ。
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