SESOSe

📞 SES営業のOS

2026-08-29|読了 約4分

SES営業がしんどいのは、あなたが未熟だからではなく「三方向」だから

SES営業を始めて数ヶ月から数年。「向いていないのかもしれない」と思い始めた人に、最初に伝えたいことがあります。

そのしんどさは、あなたの能力の問題ではありません。この役に最初から組み込まれた仕様です。

管理職のつらさが4つに分解できるように、SES営業のしんどさも分解できます。そして分解すると、どれも「誰がやっても起きること」でした。

しんどさの正体は4つ

① 三方向の板挟み——しかも3つは互いに矛盾する

管理職の板挟みは、上と下の2方向です。SES営業は3方向あります。

  • 社長・経営は「数字を」と言う
  • エンジニアは「この現場がいい」「リモートがいい」と言う
  • 客先は「もっと安く」「もっとできる人を」と言う

厄介なのは、この3つが同時には満たせないように出来ていることです。単価を上げれば客先が渋る。本人の希望に合う現場を探せば時間がかかり、待機が伸びる。早く決めれば本人が不満を持つ。どれかを立てれば、必ずどれかが倒れる。

つまりあなたは、会社の中で唯一「矛盾を吸収する場所」に座っています。疲れて当然です。調整力が低いのではなく、調整では解けない問題を毎日渡されている。

② 引き継がれない仕事

SES営業の引継ぎで渡されるのは、たいてい顧客リストと過去の請求書だけです。渡されないのはこちらです。

  • なぜその客先はその単価なのか(何を根拠に決まったのか)
  • その客先の地雷は何か(過去に何で揉めたのか)
  • 断った案件と、断った理由
  • 過去に失敗した「人と現場」の組み合わせ

これは前任者が意地悪なのではありません。書いていないものは、渡しようがないのです。とくに社長が長く1人で営業をやってきた会社では、すべてが1人の頭の中にあります。頭の中にあるものは、本人にとっては「当たり前」なので、渡すべきものだと気づかれません。

だから起きるのが「理由は教えてくれないのに、結果には文句を言われる」です。悪意ではなく、本人も言語化していないから説明できない。ただ、説明できない側の事情は、受け取る側の消耗を減らしてはくれません。

③ 成果が1年遅れて出る

営業の仕事は、成果が出るまでの時間が仕事ごとにまったく違います。

既存客への追加提案は、今月の数字に出ます。新しい取引先の開拓は、早くて半年、たいてい1年。しかも最初の1年は、名刺交換と面談と「検討します」しか積み上がりません。

月次で評価される会社では、種を撒いている期間ずっと「成果が出ていない人」になります。そして1年後にその客先へ何人も入り始めた頃には、それはもう当たり前の風景になっていて、誰も「あれは種を撒いた人がいたからだ」とは言いません。

遅れて出る成果は、記録しておかないと存在しなかったことになります。

④ 叶えられない要望の、窓口だけをやらされる

エンジニアの希望を受け取るのは営業です。しかし希望を叶えるための手札——単価に見合う実力、客先との関係の深さ、選べるだけの案件数——を持っているのは会社です。

手札が無いのに窓口だけをやると、断り続けることになります。

人は、断り続ける相手を、少しずつ嫌いになります。これは心が狭いのではありません。そうならないと持たないからです。「わがままな人ばかりだ」と思い始めたら、それはあなたが冷たくなったのではなく、冷たくならないと持たない場所にいるというサインです。

「仕様」だと分かると、何が変わるか

3つあります。

感覚の議論を、数字に戻す。 「待機が出ている」と言われたら、率にしてみてください。60人を見ていて待機1人なら98.3%です。この業界で98%は十分に高い。数字にすると、それが本当に問題なのか、それとも言いやすいことを言われているだけなのかが分かります。前任者の時代の数字が残っていれば、なお良い。残っていなければ、今日から残す側になれます。

要望を「わがまま」ではなく「データ」として扱う。 リモートを求める人が続くなら、それは会社が「リモートを選べる商流を持っていない」というデータです。上流を求める人が続くなら、「上流の仕事を取れていない」というデータです。個人の性格の話にすると腹が立つだけですが、会社の実力の話にすると、経営に持っていける材料になります。断るときも「あなたのわがままだ」ではなく「いまのうちの実力では、ここまでです」と言える。これは嘘をつかずに断る唯一の言い方でもあります。

遅れて出る成果を、自分で記録する。 訪問した会社、進んだ段階、止まった理由。1年後に「ほら見ろ」と言うためではありません。途中で自分が折れないためです。半年間まったく成果が出ていないように見える時期に、「20社に会って、3社が検討まで進んでいる」と自分で確認できるかどうかで、続くかどうかが変わります。

それでも、この役には他にないものがある

SES営業は、会社の中で唯一、外の相場を知っている人です。いまいくらで人が動いているか、どんな技術が求められているか、どの商流が伸びているか。社長より知っている場面がしばしばあります。この知識は、会社を変える力にも、自分が次に行く場所を選ぶ力にもなります。

そして、エンジニアと本当に信頼し合えた関係が1つでもあるなら——それが本来の形です。全員がそうならない理由は、たいていあなたの側にはありません。手札を増やせていない会社の側にあります。

今日はまず、「このしんどさは仕様だ」とだけ覚えて帰ってください。仕様だと分かれば、直すべき場所が自分の性格ではなく、会社の構造の方にあると分かります。


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