SESOSe

🏢 経営向けの記事

2026-10-06|読了 約2分

「やる気搾取」の帳簿——管理職の善意で回っている会社へ

多くのSES会社で、管理職はこう働いています。日中は客先で常駐エンジニアとして稼働し、管理の仕事——メンバーのフォロー、評価、採用、会議——は、その外側の時間でやる。管理の時間は、制度上どこにも割り当てられていない。

それでも会社は回っています。なぜか。管理職の善意と熱意が、制度の穴を埋めているからです。

それは、帳簿に載らない借金です

会計の言葉に翻訳すると、こうなります。管理業務に時間も対価も割り当てていない会社は、管理職の熱意を無利息・無担保で借りている。帳簿に載らないので、経営からは負債に見えません。むしろ「うちの管理職はよく頑張ってくれている」という美談に見える。

でも借金は借金なので、返済日が来ます。形は3つあります。

① 退職。いちばん高くつく形です。熱意で埋めてきた人ほど、限界が来たとき静かに、一気に辞めます。その人が埋めていた穴の大きさは、いなくなった日に初めて判明します。

② 静かな諦め。辞めはしないが、熱意の供給を止める形。提案が消え、会議の発言が減り、「言われたことだけやる管理職」が完成します。借金の利息だけを払い続けている状態で、経営には「最近あいつは覇気がない」と見えます。

③ 連鎖。いちばん見えにくく、いちばん深刻な形です。熱意で穴を埋めている管理職の下で、次のリーダーが育つとき——その人も同じ構造に入ります。「頑張れば頑張るほど損をする」構造の中で頑張る姿を、次の世代に手本として見せてしまう。善意の借金は、世代をまたいで相続されます。

法律の話も、一度だけ

「管理職だから残業代は不要」が適用される労働法上の管理監督者の条件は、極めて狭いものです(経営への実質的な参画・出退勤の裁量・地位に相応しい待遇)。肩書が課長・部長でも、この条件を満たさなければ残業代の支払い義務はあります。管理業務の時間外労働が勤怠に計上されていない状態は、美談ではなく法令リスクです。労務トラブルは、いちばん高い返済形態のひとつです。

直し方——熱意を、制度に置き換える

① 管理の時間を、工数として認める。月に半日〜1日の「社内業務日」を役割に応じて設計するだけで、管理は「夜の残り仕事」から「業務」に変わります。稼働率への影響は計算できる範囲で、退職1人分のコストよりはるかに安い。

② 管理の成果を、評価に載せる。メンバーの定着・育成・現場の安定は、単価と同じ経営成果です。評価されない仕事は、必ず後回しにされます(管理職が育たないのは制度の問題)。

③ 熱意で回っている場所を、先に探す。「あの部署はうまくいっている」の内訳を見てください。制度がうまくいっているのか、誰かの夜がうまくいっているのか。後者なら、それは成功事例ではなく、いちばん大きな返済日予備軍です。

点検——ひとつだけ

あなたの会社の管理職が管理の仕事をしている時間帯は、いつですか。

答えが「夜」や「週末」なら、この記事はあなたの会社の話です。そしてその管理職が今も頑張ってくれているなら——返済日が来る前に、制度で返し始めてください。熱意は、借り続けるものではなく、報いるものです。


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