🏢 経営向けの記事
取適法(旧・下請法)が委託側に生じさせる義務——書面明示と支払期日
金額と納期はすべて口頭で伝え、メールには「よろしくお願いします」としか書いていない——こうした発注の運用が続いている会社は、少なくありません。悪気なく積み重なった慣行が、法律の観点では最初から違反だった、ということが起こります。
2026年1月、下請法は取適法になった
2026年1月1日、下請法は「中小受託取引適正化法(取適法)」に変わりました。呼び名も、親事業者は委託事業者、下請事業者は中小受託事業者に変わっています。委託事業者に課される義務は4つです。
- 発注内容の明示——書面や電磁的方法(メール等)で、具体的な内容を示すこと
- 取引記録の作成と2年間の保存
- 支払期日を定めること
- 遅れたときの遅延利息(年14.6%)
口頭発注が常態化している会社は、この時点ですでに違反している可能性があります。メールという手段を使っていても、中身が挨拶だけなら明示したことにはなりません。
支払期日は「受領日」から数える
取適法が定める支払期日は、給付を受領した日から60日以内、できる限り短くが原則です。起算点は受領した日であって、検収が終わった日でも、請求書を受け取った日でもありません。だから「検収が終わらないから払わない」は通りません。
さらに2026年1月の改正で、支払いを先送りする手段として使われてきた手形による支払いが禁止されました。自社がされて困ることは、たいてい法で禁じられています。
「対象外」の説明は、自社でも確かめる
取適法が適用されるかどうかは、①取引の内容と、②資本金基準または従業員基準で決まります。2026年1月の改正で従業員数の基準が加わり、資本金の基準を下回っていても、従業員数の基準に当てはまれば対象になります(いずれかの基準に該当すれば適用対象)。
そして取引の内容によって、見る数字が変わります。プログラムの作成は「資本金3億円・従業員300人」のグループで、それ以外の情報成果物作成委託・役務提供委託は「資本金5千万円・従業員100人」のグループです。ソフトウェアの開発を外に出している会社は、前者の数字で判定することになります。
ここが実務で効きます。自社の資本金が3億円以下でも、資本金1千万円以下の相手に発注していれば、自社が委託事業者の側です。多重の商流にいる会社ほど、同じ取引で守られる側と守る側を同時にやっています。委託先から「うちは資本金が少ないので対象外です」と言われても、その説明を鵜呑みにせず、自社側でも基準を確かめてください。禁止行為(減額など)についてはこちらの記事で扱っています。
発注まわりの数字は経営者・幹部の型で確認できます。自社の状態は組織診断から。
一次情報
数字と線引きは、公正取引委員会の資料で直接確かめられます。
- 取適法(公正取引委員会) — 制度全体の入口
- 2026年1月から「下請法」は「取適法」へ!(リーフレット・PDF) — 適用対象の表(資本金/従業員の組み合わせ)、4つの義務、11の禁止項目が1枚に載っています
- 中小受託取引適正化法テキスト(PDF) — 公正取引委員会・中小企業庁
- よくある質問コーナー(取適法) — 個別の判断で迷ったとき
2026年8月時点の制度に基づいています。実際の判断は、専門家の助言の代わりにはなりません。