🏢 経営向けの記事
2026-08-25|読了 約2分
協力会社を「切る」と決めるとき、発注側は何を見ていたか——使う側の本音①
SES事業者から見える景色は、いつも受注側の景色です。しかし単価も、継続も、終了も——意思決定はすべて「使う側」の机の上で行われています。
この連載は、その机の反対側で何が起きているかを、事業者側の言葉に翻訳するものです。書き手は事業者側の人間ですが、協力会社の受け入れ・選定という「使う側」の椅子にも長く座ってきました。その椅子から見えていたものを書きます。
「切る」は突然ではない——3段階で進んでいる
契約終了の連絡は突然に見えます。しかし使う側の中では、たいてい3段階を踏んでいます。
- 違和感の蓄積——小さな報連相の欠け、認識のズレ、締切の際どさ。この段階では何も言われません。「わざわざ言うほどではない」が静かに積もります。
- 代替の検討——次の面談で「比較対象」を見始めます。表面上は何も変わりません。
- 契約タイミングでの実行——更新月は「実行日」であって「判断日」ではありません。判断は1〜2か月前に終わっています。
事業者側への翻訳:更新月に慌てても、もう遅い。動くべきは判断が行われている「その前」です。
見られていたのは、スキルより「管理コスト」
意外に思われるかもしれませんが、スキルの評価は参画面談でほぼ終わっています。継続と単価を決めていたのは、運用が始まってからの管理コストです。
- 手離れの良さ——指示がどこまで粗くても、意図を汲んで動けるか
- 問題の先出し——遅延や詰まりを「聞かれる前に」言えるか
- 現場リーダーの一言——そして最大の変数はこれです。決裁者は、営業が面会する「偉い人」ではありません。その人の隣の席にいる現場リーダーの「あの人どうですか」への答えが、実質の人事権を握っています。
単価が上がる人の共通点は、突出したスキルではなく「管理コストが低い」でした。手がかからない人月は、同じ単価でも安いのです。
「値上げが通る」とき、使う側の頭の中
値上げの相談を受けた使う側は、こう考えます。
- 交代コストとの天秤——断って交代になった場合、受け入れ直しに1〜2か月のキャッチアップコストがかかる。それと比べてどちらが高いか。
- 予算の締め——期初に来る値上げは通しやすく、期中は稟議が重い。タイミングは金額と同じくらい効く。
- 現場の声——「あの人が抜けたら困る」を現場が言語化してくれていれば、稟議は書きやすい。
翻訳すると:値上げ交渉とは「単価を上げてほしい」と頼むことではなく、相手が社内で稟議を書きやすい材料を渡すことです。稟議を書くのは、あなたではなく相手です。
事業者側がやるべきことは3つ
- 現場リーダーとの温度取りを定例にする——営業は決裁者ではなく、現場に会いに行く
- 問題の先出しを文化にする——管理コストの低さは、見せなければ伝わらない
- 更新2か月前に会話を始める——「判断日」に間に合わせる
使う側は、意地悪で切るのではありません。管理コストと成果の天秤を、静かに見ているだけです。天秤の存在を知っている事業者だけが、切られる前に手を打てます。
次回は「参画面談で、本当に見られていたもの」を書きます。