🏢 経営向けの記事
単価交渉の相手は、実はその場で何も決めていない
「あの担当者、話は分かってくれたんです。でも単価は変わりませんでした」——この経験があるなら、交渉の技術ではなく、交渉する相手を間違えていた可能性を疑ってください。
目の前の相手も、上に説明する側にいる
多重下請けの商流では、あなたの直接の窓口は、たいてい決定権者ではありません。窓口の会社もまた、その上の会社に対して自社の取り分を説明し、予算の枠内でやりくりしている側です。あなたが窓口を説得しても、窓口自身が「自分の上」を説得できる材料を持っていなければ、単価は動きません。
単価はどうやって決まっていたか——査定の裏側で書いたとおり、単価は建前の相場ではなく、予算の枠と比較とリスク料で決まります。多重下請けでは、この「枠」が何層も重なっています。窓口の担当者に響いた話が、その上の会議室では跡形もなく削られる——これはよくあることです。
材料は「説得材料」ではなく「持ち帰り材料」で作る
「◯◯さんの役割が広がっているので単価を上げてほしい」は、あなたと窓口の間でしか通用しない材料です。 窓口がそのまま上に持っていっても、上の会社にとっては「よその社員の話」でしかありません。
効くのは、窓口自身が自分の会社の言葉として上に説明できる形にした材料です。
「Aさんの参画で御社側の工数がどれだけ削減できているか、この半年の実績を数字にしてお渡しします。これを使って、御社からもう一段上に単価改定の相談を上げてもらえないでしょうか。」
役割の変化や貢献の記録を、窓口の会社の成果として語れる形に翻訳して渡す——ここが、直接交渉と多重下請けでの交渉の最大の違いです。
動く層と動かない層を見分ける
商流のすべての層で、同じだけ単価が動くわけではありません。目安は次の2つです。
- 窓口が、あなたの現場について具体的な事実を語れるか——語れるなら、上との交渉材料を欲しがっている可能性が高い層です
- 窓口が、上からの依頼をそのまま右から左に流すだけか——流すだけの層は、材料を渡しても上に運ばれません
後者に材料を渡しても徒労に終わります。まず窓口がどちら側かを見極めてから、材料の作り込みに時間をかけてください。
商流を変える話とは、別の話
商流そのものを短くする動き(直請け化)は、時間のかかる別の戦略です。二次請けから直請けへで扱っているのはその話で、商流1本依存のリスクはまた別の論点です。この記事で書いたのは、今の商流構造を変えなくても、今期中に打てる手です。窓口を飛ばす必要はなく、窓口の背中を押す材料を用意するだけで動く単価があります。