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🏢 経営向けの記事

2026-08-01|読了 約2分

客先常駐と安全配慮義務——「見えていなかった」は免責にならない

客先常駐の社員が体調を崩して休職した。自社の管理職は「現場のことは客先に任せていたので、把握していませんでした」と説明している——この説明、法律の観点では通りません。

時間管理の責任は、客先ではなく自社にある

準委任で常駐している社員である以上、指揮命令も労働時間の管理も、本来は自社の仕事です。「客先が帰してくれない」という現場の声は、実は自社が管理していないという意味になります。 時間管理を客先任せにしている実態は、業務の指示を放置しているだけでなく、そのまま偽装請負の判定材料にもなります。

「毎日、日付が変わる前後まで残業しているが、自社には何も報告が上がっていない」という状態が起きたとき、まず疑うべきは本人の申告の甘さではなく、自社が管理を客先任せにし、把握できていないという構造上の一次原因です。ここを疑わずに個人の問題にすり替えると、同じことが別の現場でまた起きます。

「見えていなかった」自体が、義務違反の証拠になる

労働契約法5条は、使用者に安全配慮義務を課しています。労働時間の把握、状況の確認、必要なら現場からの引き上げまでが会社の仕事です。「現場が見えていなかった」という説明は、免責の理由にはならず、むしろ義務を果たすための仕組みが無かったことの証拠になります。

SESの構造上、これはいちばん見落とされやすく、いちばん重い論点です。しかも、事故が起きてからでは戻せません。

予兆は、月次報告の「異常なし」の裏に出る

体調を崩す前触れは、たいてい数字より先に態度に出ます。定例の電話で声のトーンが落ちている、月報の提出が数日遅れるようになった、雑談が減って業務連絡だけになった——こうした変化は、稼働時間の集計表には出てきません。月次報告に「異常なし」としか書かれていない現場ほど、実は誰も踏み込んで聞いていないだけ、ということがあります。

安全配慮義務を果たすということは、体調を崩してから対応することではなく、崩れる前の変化に気づける接点を、客先任せにせず自社で持っておくことです。

カルテと定期面談は、優しさである前に義務

定期的な面談や状態の記録は、社員への配慮としてだけでなく、この安全配慮義務を果たすための仕組みでもあります。客先常駐という働き方そのものが「放置」を生みやすい構造だからこそ、意識して介入する場を作る必要があります。放置のリスクと1on1の仕組みについてはこちらの記事で扱っています。

時間外労働そのものの上限規制についてはこちらの記事も参考にしてください。上限を守る責任と、体調を守る責任は、どちらも同じ「自社が現場を把握しているか」という一点に戻ってきます。

自社の常駐管理の状態は組織診断で棚卸しできます。

2026年8月時点の制度に基づいています。実際の判断は、専門家の助言の代わりにはなりません。